実在する珍しい名字 (4)

古い言葉系

名字が生まれた当時は普通の言葉だったのに、というものもあります。
名字が生まれたのは平安時代後半からで、鎌倉時代や室町時代に爆発的に増えました。ですから、名字の多くは当時の言葉でつけられています。
言葉は時代とともに変化していきます。当時書かれたものをみても、多くの古語があって意味がわからないことも多いと思います。そうした当時の言葉で付けられた名字が、今となってはユニークな名字となったものがあるのです。

唐桶 からおけ

「唐」とは言うまでもなく中国のこと。ですから、「唐桶」というのは中国の桶、或いは中国風の桶のことでしょう。
こうした桶を作っていたか、販売していた人が名字にしたものだと思います。職業の由来の名字の1つで、別におもしろい名字でもなんでもなかったのですが、昭和の終わりころからカラオケが普及したことで、一躍ユニークな名字となってしまいました。
現在は、島根県の出雲地方から鳥取県西部にかけてあります。

郷右近 ごうこん

「唐桶」と似たようなパターンの名字です。この名字はかなり古く、戦国時代から宮城県には郷右近氏がいたことが知られています。
「郷」とは地方の村のこと、「右近」は役職ですが、「郷」家と「右近」家が合体してできた名字ではないでしょうか。本来の読み方は「ごううこん」ですが、発音しづらいこともあり、一般的には「ごうこん」と呼ばれ、現在では「ごうこん」を正しい読み方としている家もあります。
まさか「合コン」という言葉ができるとは思わなかったでしょうね。

馬締 まじめ

かつて、宿場では旅人が泊るだけではなく、馬の中継もしていました。この場所は一般的には「問屋場」というのですが、「馬締」ともいったことから生まれた名字です。略して「馬〆」とも書き、三重県や大分県、福岡県などにあります。

一円 いちえん

この一円とは、お金の単位ではありません。「このあたり一円」なとどいう時の「一円」です。
もともと滋賀県に一円という地名があり、ここをルーツとする一円氏がありました。一族はのちに高知県に移り、戦国時代の城主に一円氏がいたことが知られています。
一円が珍しい名字となったのは、明治になってお金の単位が「両」や「文」から、「円」や「銭」になった時からです。それでも、当時の一円は大金で、むしろうらやましい名字だったかもしれません。しかし、お金の勝ちがどんどん下がってきて、とうとう最低の金額になり、一円さんも珍しい名字の仲間入りをしてしまいました。

傘 からかさ

「傘」という名字があり、「からかさ」と読みます。なぜでしょうか。
「かさ」には「笠」と「傘」という2つの漢字がありますが、実はこの2つは違うものなのです。「笠」は古代から日本にあるもので、頭に直接乗せるものです。一方、中国から伝わった手に持つものは「傘」の漢字を使いました。中国(唐=から)から来たカサなので、「傘」を「からかさ」と読んでいるのです。

銅・鉄 あかがね・くろがね

古代、銅のことを「あかがね」といいました。そこから、「銅」と書いて「あかがね」と読む名字があります。「赤金」と書くこともあります。
また、鉄のことは「くろがね」と言ったため、「鉄」と書いて「くろがね」と読む名字もあります。
さらに、鉱石を取り出す前の原石を「あらがね」と言ったことから、島根県には「」で「あらがね」という名字もあるのです。